この記事の結論
- iDeCoは、公的年金に上乗せする老後資金を自分で積み立てて運用する私的年金です。掛金は全額が所得控除になります
- 掛金の上限は、給与か報酬かではなく、国民年金の被保険者区分で決まります
- 第1号被保険者の上限は現在月68,000円です。2026年12月分、原則2027年1月引落しから月75,000円に引き上げられます
- 夜職から報酬を受け取っていても、昼職などで厚生年金に加入していれば第2号です。反対に、給与型でも厚生年金に加入しておらず、第3号でもなければ原則として第1号です
- 国民年金保険料の免除・納付猶予・学生納付特例を受けている人は、原則としてiDeCoに加入できません。未納月については、その月のiDeCo掛金が還付されます
- 小規模企業共済との大きな違いは、iDeCoの資産を原則60歳まで引き出せないことです。どちらを先に考えるかは、途中でお金を出せる必要があるかで分かれます
1. iDeCoは公的年金に上乗せする私的年金
iDeCoの正式名称は「個人型確定拠出年金」です。
毎月掛金を積み立て、自分で選んだ商品で運用し、原則として60歳以降に受け取ります。
国民年金そのものではなく、国民年金や厚生年金に上乗せして、自分で老後資金を準備する私的年金です。
積み立てた掛金と、その後の運用結果によって、将来受け取る金額が変わります。
1-1. 税金上の優遇は掛金の控除だけではない
iDeCoの税金上の特徴は、掛金の所得控除だけではありません。
1つ目は、その年に支払った掛金の全額が所得控除になることです。
控除の名称は「小規模企業共済等掛金控除」です。小規模企業共済で夜職の退職金を自作するの掛金と同じ控除区分に入り、確定申告では所得から差し引きます。
2つ目は、制度内で発生した運用益が非課税で再投資されることです。
通常の課税口座で投資信託などを運用すると、利益に税金がかかることがあります。iDeCoの口座内で発生した運用益には、運用中の税金がかかりません。
3つ目は、受取時にも税金上の控除があることです。
- 一時金で受け取る場合:退職所得控除
- 年金で受け取る場合:公的年金等控除
の対象になります。
ただし、受取時に必ず税金がゼロになるという意味ではありません。ほかの退職金や年金、受取額、受取時期によって税額は変わります。
また、「掛金が全額所得控除になる」と「掛金と同じ金額の税金が戻る」は別の話です。
たとえば年間12万円を積み立てても、税金が12万円戻るわけではありません。
実際に減る税額は、その人の所得、所得税率、住民税、ほかの控除によって変わります。もともと課税される所得がほとんどない年は、掛金控除による税負担の軽減も小さくなります。
2. 自分が第何号かを確認する
iDeCoの加入資格と掛金上限は、国民年金の被保険者区分によって決まります。
給与か報酬か、店から何と呼ばれているかだけでは決まりません。
2-1. 国民年金の区分
20歳以上60歳未満の人の主な区分は、次のとおりです。
- 第1号被保険者:厚生年金に加入しておらず、第3号でもない自営業者・フリーランス・学生・無職の人など
- 第2号被保険者:厚生年金に加入している会社員・公務員など
- 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者
日本国内に住む20歳以上60歳未満の人で、厚生年金に加入しておらず、第3号にも該当しない人は、原則として国民年金の第1号被保険者になります。
2-2. 報酬型でも第2号になることがある
夜職の店から報酬を受け取っている個人事業主は、ほかに厚生年金へ加入する仕事がなければ、通常は第1号です。
ただし、報酬型なら必ず第1号になるわけではありません。
たとえば、昼職の会社で厚生年金に加入しながら、夜職では業務委託の報酬を受け取っている場合、年金上の区分は第2号です。
夜職側の所得が事業所得かどうかと、国民年金の被保険者区分は、別々に判断します。
これは小規模企業共済の加入資格とも異なります。
小規模企業共済は、常時雇用される給与所得者が副業で事業所得を得ていても、原則として加入できません。
一方、iDeCoは第2号被保険者として加入できる場合があります。
制度ごとに入口の条件が違うため、上記リンク「小規模企業共済で夜職の退職金を自作する」の3章と分けて確認してください。
2-3. 給与型でも第1号になることがある
店から給与として受け取っていても、実際に厚生年金へ加入しておらず、第3号にも該当しない場合は、原則として第1号です。
給与明細に「厚生年金保険料」の控除があるかは、一つの手掛かりになります。
ただし、給与明細だけでなく、「ねんきんネット」で各月の国民年金・厚生年金の加入記録を確認するほうが確実です。
なお、現在は厚生年金に入っていなくても、勤務先や労働時間などの条件によっては、本来は厚生年金の加入対象である可能性があります。
「給与から厚生年金が引かれていないから必ず第1号」とは断定せず、勤務実態に疑問がある場合は年金事務所へ確認してください。
2-4. 免除・猶予と未納は扱いが違う
ここは分けて理解する必要があります。
国民年金保険料の免除・納付猶予を受けている場合
国民年金保険料の全額免除・一部免除、納付猶予、学生納付特例を受けている期間は、原則としてiDeCoの加入者になれません。
ただし、障害基礎年金の受給者など、一部に例外があります。
国民年金保険料が未納の場合
未納があることと、正式な免除・猶予を受けていることは同じではありません。
第1号加入者に国民年金保険料の未納月がある場合、その月はiDeCo掛金を拠出できません。
すでにiDeCo掛金が引き落とされていた場合は、後から還付されます。還付時には手数料が差し引かれる場合があります。
したがって、
- 免除・猶予中なら原則加入できない
- 未納月があれば、その月の掛金が還付される
- 国民年金を正常に納めている月に、iDeCoを上乗せする
という順序で考えます。
夜職を始めてから国民年金の手続きをしていない人は、iDeCoを考える前に、まず自分の加入記録と納付状況を確認してください。
税金の無申告と年金の未納は別の制度ですが、手続きが止まったままになっている人は、夜職で無申告だった人が今からやることもあわせて確認してください。
3. 第1号被保険者の掛金
3-1. 現在の上限は月68,000円
第1号被保険者のiDeCo掛金は、月5,000円から1,000円単位で設定できます。
現在の上限は月68,000円です。年額では最大816,000円になります。
ただし、これはiDeCoだけで必ず月68,000円を積み立てられるという意味ではありません。
国民年金基金の掛金や付加保険料を納めている場合は、それらと合わせて上限額を判定します。
3-2. 2026年12月分から月75,000円へ引き上げ
制度改正により、第1号被保険者と国民年金の任意加入被保険者の拠出限度額は、月68,000円から月75,000円へ引き上げられます。
施行は2026年12月です。
毎月の掛金は原則として対象月の翌月に引き落とされるため、2026年12月分は原則として2027年1月の引落しになります。この記事を読んでいる時点の上限額と手続きの詳細は、iDeCo公式サイトで確認してください。
3-3. 付加年金・国民年金基金と枠を共有する
第1号被保険者の上限は、iDeCoだけの独立した枠ではありません。
国民年金基金に加入している場合は、基金の掛金とiDeCoの合計で上限を判定します。
また、月400円の付加保険料を納めている場合も、iDeCo掛金と合算して上限以内に収める必要があります。

付加年金とiDeCoは併用できますが、両方を合わせた限度額で考えます。
3-4. 手数料は掛金とは別にかかる
iDeCoには、加入時、掛金の納付時、資産の管理中、受取時などに手数料がかかります。
国民年金基金連合会などに支払う共通の手数料に加えて、選んだ金融機関による手数料があります。
金融機関によって無料になる部分と異なる部分があるため、申込み前に確認が必要です。
掛金が少額であるほど、掛金に対する固定手数料の割合は相対的に大きくなります。
月5,000円から始められること自体は長所ですが、「最少額なら必ず有利」という意味ではありません。
月1,000円から掛けられる小規模企業共済と比較するときは、引出し条件だけでなく、手数料の違いも確認してください。
4. 小規模企業共済との使い分け
iDeCoと小規模企業共済は、どちらも掛金が「小規模企業共済等掛金控除」の対象になります。
加入資格を満たして両方に加入している場合は、その年に実際に支払った両制度の掛金が所得控除の対象です。
ただし、制度の目的と、お金を受け取れる時期が異なります。
4-1. iDeCoは原則60歳まで引き出せない
iDeCoに入れた資産は、原則として60歳以降の受給年齢まで引き出せません。
収入が減った、夜職を辞めた、急な支払いが発生したという理由で、自由に解約して現金化することはできません。
掛金の拠出を止めることはできますが、積み立て済みの資産は「運用指図者」として運用を続けます。
また、60歳になれば必ずすぐ受け取れるわけでもありません。
60歳から受け取るには、確定拠出年金の通算加入者等期間が10年以上必要です。
期間が10年未満の場合は、受給を開始できる年齢が61歳から65歳まで段階的に遅くなります。
4-2. 小規模企業共済には途中の出口がある
小規模企業共済は、廃業時などに共済金を受け取る制度です。
また、元本割れの可能性はありますが、任意解約という出口もあります。
iDeCoのように「原則60歳まで一切出せない」制度ではありません。
ただし、共済も普通預金ではありません。
任意解約では、納付期間20年未満の場合に元本割れします。納付月数によっては、共済金や解約手当金を受け取れない場合もあります。
詳細は「小規模企業共済で夜職の退職金を自作する」の4章を確認してください。
4-3. ケース別の考え方
数年以内に夜職を辞める可能性がある人
小規模企業共済の加入資格があるなら、廃業時に受け取る制度である共済のほうが、目的に合う可能性があります。
ただし、「短期間なら必ず全額戻る」という制度ではありません。
加入直後に廃業した場合や、短期間で任意解約した場合には、掛金を下回ったり、受け取れなかったりする可能性があります。
老後まで使わないお金を固定したい人
iDeCoの引出し制限が、目的に合う可能性があります。
貯金があると生活費や買い物に使ってしまう人にとっては、60歳まで出せないことが老後資金を守る仕組みになります。
生活防衛資金がない人
どちらよりも先に、生活費と緊急資金の確保が必要です。
iDeCoは自由に引き出せず、小規模企業共済も普通預金の代わりにはなりません。

国民年金の免除・猶予を受けている人
iDeCoより先に、国民年金の状況を確認します。
所得が少なく保険料の支払いが難しい場合、無理に免除を外してiDeCoを始めても、手元資金を減らすだけになる可能性があります。
制度に入れることと、今入るべきことは別です。
両方に入る余裕がある人
それぞれの加入資格を満たせば、iDeCoと小規模企業共済は併用できます。
ただし、控除を増やすことだけを目的に、生活費を削って両方へ入れる必要はありません。
生活防衛資金を確保したうえで、
- 廃業後の資金を共済で準備する
- 老後資金をiDeCoで固定する
というように、使う時期を分けて考えます。
4-4. 夜職を辞めて昼職に移ったとき
夜職を辞めて厚生年金のある会社へ就職しても、iDeCoの資産が消えるわけではありません。
第1号から第2号へ区分が変わるため、利用している金融機関へ加入区分の変更を届け出ます。
勤務先に企業年金があるかどうかなどによって、加入条件や掛金上限も変わります。
必要な変更手続きをしないと、掛金の引落しが止まる場合があります。
小規模企業共済は、廃業が受取りのきっかけになり得ます。
iDeCoは、夜職を辞めても原則として老後まで持ち続けます。
この違いが、2制度の使い分けの中心です。
5. 加入の手続き
5-1. 金融機関を1社選ぶ
iDeCoは、銀行や証券会社などの金融機関を1社選んで申し込みます。
iDeCoの口座は、1人につき1つです。同時に複数の金融機関でiDeCo口座を持つことはできません。
金融機関によって、次の内容が異なります。
- 取り扱う運用商品
- 金融機関側の手数料
- 申込み方法
- Webサイトやアプリの使いやすさ
- 問い合わせ窓口
この記事では、特定の金融機関を勧めません。
iDeCo公式サイトの金融機関一覧と、各金融機関の公式情報を確認してください。
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5-2. 申込み前に確認するもの
第1号被保険者が申し込む場合は、少なくとも次の情報を確認します。
- 基礎年金番号
- 国民年金の被保険者区分
- 国民年金保険料の免除・猶予・未納状況
- 掛金を引き落とす本人名義口座
- 本人確認書類
- 国民年金基金・付加保険料の利用状況
基礎年金番号通知書、年金手帳、ねんきんネットなどで年金記録を確認してから申し込むと、区分の間違いを防ぎやすくなります。
5-3. 初回引落しは受付時期で変わる
申込書やオンライン申請を金融機関へ提出した後、国民年金基金連合会による加入資格の確認を経て加入となります。
申込書の提出時期や不備の有無によって、初回引落しの時期は変わります。
初回に2か月分がまとめて引き落とされる場合もあるため、申込直後は口座残高に注意してください。
年内の所得控除に使いたい場合は、「申し込んだ日」ではなく、実際にその年中に掛金が引き落とされるかを確認する必要があります。
控除の対象になるのは、その年中に実際に支払った掛金です。
5-4. 掛金額の変更と停止
掛金額は、原則として年1回変更できます。
掛金の拠出自体を止めることもできますが、停止しただけでは、積み立てた資産を受け取れません。
掛金を止めた後は、運用指図者として資産の運用だけを続けます。
収入の上下が大きい夜職では、上限額から考えるより、毎年無理なく払い続けられる額から決めるほうが安全です。
5-5. 確定申告で所得控除を受ける
iDeCo掛金を本人名義の口座から支払うと、「小規模企業共済等掛金払込証明書」が発行されます。
確定申告では、この証明書に記載された金額を、小規模企業共済等掛金控除の欄へ記入します。
小規模企業共済にも加入している場合は、証明書を混同せず、それぞれの支払額を確認してください。
申告書のどこに入力するかは、申告全体の記事で説明しています。

6. 運用商品についてこの記事が書かないこと
iDeCoでは、加入者が自分で運用商品を選びます。
主な種類には、次のようなものがあります。
- 定期預金
- 保険商品
- 投資信託
この記事では、特定の金融機関、投資信託、配分割合、将来の利回りは勧めません。
どの商品が適切かは、年齢、収入、保有資産、損失への耐え方によって異なるためです。
iDeCoには定期預金などの元本確保型商品もあり、「iDeCoに入ったら必ず投資信託を買う」という制度ではありません。
ただし、元本確保型を選んでも、制度上の手数料はかかります。
そのため、「値下がりしない商品を選べば、資産が必ず掛金以上に増える」とは限りません。
特に少額の掛金では、受け取る利息と手数料の関係も確認する必要があります。
よくある質問
Q. 夜職でもiDeCoに入れますか? A. 夜職という業種ではなく、国民年金の被保険者区分と保険料の状況で決まります。第1号・第2号・第3号など、それぞれの条件を満たせば加入できます。→2章
Q. 報酬型なら第1号ですか? A. 必ずしも第1号ではありません。昼職などで厚生年金に加入していれば、夜職側が報酬でも第2号です。→2-2
Q. 給与型でも第1号になることがありますか? A. 実際に厚生年金へ加入しておらず、第3号でもなければ、原則として第1号です。本来は厚生年金の加入対象である可能性がある場合は、年金事務所へ確認してください。→2-3
Q. 掛金はいくらからですか? A. 月5,000円から1,000円単位です。第1号の現行上限は月68,000円で、2026年12月分から月75,000円へ引き上げられます。→3-1・3-2
Q. 国民年金が未納でも入れますか? A. 未納月はiDeCo掛金を拠出できず、引き落とされた掛金は後から還付されます。免除・納付猶予等を受けている人は、原則として加入できません。→2-4
Q. 付加年金と併用できますか? A. 併用できます。ただし、付加保険料とiDeCo掛金を合わせて、第1号の拠出限度額以内にする必要があります。→3-3
Q. 小規模企業共済とどちらを先にするべきですか? A. 加入資格を満たすことが前提ですが、途中でお金を出せる必要があるかが分かれ目です。iDeCoは原則60歳まで引き出せず、共済には廃業・任意解約という出口があります。→4章
Q. 両方に入れますか? A. それぞれの加入資格を満たせば併用できます。その年に支払った両方の掛金が、小規模企業共済等掛金控除の対象になります。→4-3
Q. 夜職を辞めて会社員になったら解約できますか? A. 原則として解約して受け取ることはできません。第1号から第2号への区分変更を届け出て、条件に応じて継続または掛金停止の手続きをします。→4-4
Q. 60歳になればすぐ受け取れますか? A. 通算加入者等期間が10年未満の場合、受給開始可能年齢が61歳以降に遅くなることがあります。→4-1
Q. どの金融機関や商品がよいですか? A. この記事では特定の金融機関・商品を勧めません。手数料、商品構成、管理画面、問い合わせ方法を公式情報で確認してください。→5-1・6章
まとめ
- iDeCoは公的年金に上乗せする私的年金で、掛金・運用中・受取時に税金上の仕組みがあります。→1章
- 国民年金の区分は給与か報酬かだけでは決まらず、厚生年金の加入状態で分かれます。→2章
- 免除・猶予中は原則加入できず、未納月のiDeCo掛金は還付されます。→2-4
- 第1号の現行上限は月68,000円で、2026年12月分から月75,000円へ引き上げられます。→3章
- 国民年金基金・付加保険料とは拠出限度額を共有します。→3-3
- 小規模企業共済との分かれ目は、途中で資金を出せる必要があるかです。→4章
- 夜職を辞めて厚生年金へ加入した場合は、第1号から第2号への変更手続きが必要です。→4-4
- 申込みは金融機関を1社選び、年金区分と掛金額を確認して行います。→5章
- 元本確保型商品も選べますが、手数料を含めて資産が必ず増えるとは限りません。→6章

