この記事の結論
- 付加年金は、国民年金の保険料に月400円を上乗せして納めると、将来受け取る年金が増える制度です
- 増える年額は「200円×付加保険料を納めた月数」です。通常どおり65歳から受け取る場合、2年間で納付額と同額になり、2年を超えて受け取ると納付額を上回ります
- 使えるのは、国民年金の第1号被保険者と65歳未満の任意加入被保険者です。厚生年金に加入している人や、保険料の免除・猶予を受けている人は原則として納められません
- 付加年金の金額には物価スライドがありません。物価が上がっても上乗せ額は増えず、老齢基礎年金を繰上げ・繰下げ受給すると付加年金も減額・増額されます
- 手続きは、市区町村の窓口・年金事務所・電子申請で行えます。付加保険料は社会保険料控除の対象です
1. 付加年金は国民年金への上乗せ
付加年金は、国民年金の定額保険料に月400円の付加保険料を追加で納めることで、将来の老齢基礎年金に上乗せを作る制度です。
iDeCoのように、自分で投資商品を選んで運用する制度ではありません。
納めた月数に応じて、将来受け取る年金額そのものが増えます。付加年金は老齢基礎年金とあわせて受け取る終身年金です。
1-1. 使えるのは第1号被保険者と任意加入被保険者
付加保険料を納められるのは、次の人です。
- 国民年金の第1号被保険者
- 65歳未満の任意加入被保険者
夜職の場合、夜職の報酬だけで生活しており、厚生年金に加入せず、自分で国民年金保険料を納めている人は、通常は第1号被保険者です。
ただし、夜職から報酬を受け取っていても、昼職などで厚生年金に加入していれば第2号被保険者です。報酬型だから必ず第1号になるわけではありません。
自分がどの区分かの確認方法は、iDeCoの記事の2章で説明しています。

厚生年金に加入している第2号被保険者と、その扶養に入っている第3号被保険者は、付加保険料を納められません。
1-2. 厚生年金がない人にとっての上乗せ手段
厚生年金に加入している会社員は、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受け取ります。年金が2階建てになっている状態です。
これに対し、厚生年金に加入していない第1号被保険者が将来受け取るのは、原則として老齢基礎年金だけです。
夜職で報酬を受け取り、自分で国民年金を納めている人の多くはこの形になります。上乗せの部分は、自分で選んで作らなければ存在しません。
付加年金は、その選択肢のうち最も負担が小さいものです。国民年金基金やiDeCoが月単位で数千円から数万円の設計であるのに対し、付加年金は月400円から始まります。
1-3. 免除・猶予を受けている期間は原則として納められない
次の期間は、原則として付加保険料を納められません。
- 法定免除
- 全額免除
- 一部免除
- 納付猶予
- 学生納付特例
ただし、産前産後期間の保険料免除を受けている人は、付加保険料を納めることができます。
また、国民年金基金に加入している人も、付加保険料を納められません。
付加年金は、国民年金の定額保険料を納めている人が、その上に追加する制度です。保険料の免除・猶予を受けている人は、まず自分の国民年金の状況を確認してください。
2. 付加年金でどれだけ増えるか
2-1. 計算式は200円×納付月数
老齢基礎年金に上乗せされる付加年金の年額は、次の式で決まります。
200円×付加保険料を納めた月数
たとえば、10年間納めた場合は次のようになります。
- 納付月数:120か月
- 付加年金:200円×120か月
- 増える年金:年24,000円
この24,000円は一度だけ支給されるのではありません。
老齢基礎年金を受け取っている間、毎年上乗せされます。
2-2. 2年間で納付額と同額になる
10年間納めた場合の支払額は、次のとおりです。
- 納めた付加保険料:400円×120か月=48,000円
- 増える付加年金:年24,000円
年24,000円を2年間受け取ると48,000円になり、納めた額と同額になります。
2年を超えて受け取ると、額面上は納付した付加保険料を上回ります。
これは10年間納めた場合だけではありません。
1か月につき400円を納め、その月について年200円が上乗せされる構造なので、通常どおり65歳から受け取る場合は、納付月数にかかわらず2年間で納付額と同額になる計算です。
ただし、これは税金・物価変動・お金の時間的価値を考慮しない、額面上の比較です。
また、老齢基礎年金を繰上げ受給して付加年金が減額された場合は、2年間で同額になるという計算はそのまま当てはまりません。
2-3. 付加年金だけを単独では受け取れない
付加年金は、老齢基礎年金に上乗せして受け取る制度です。
付加保険料を納めていても、老齢基礎年金の受給資格を満たしていなければ、付加年金だけを単独で受け取ることはできません。
国民年金の納付済期間や免除期間などが合計10年に満たない人は、付加年金より先に、老齢基礎年金の受給資格を確認する必要があります。
3. 付加年金は得だけの制度ではない
月400円という負担の軽さと、2年を超えて受け取ると納付額を上回る仕組みは、付加年金の強い特徴です。
ただし、誰にとっても必ず有利になるとは限りません。
3-1. 物価が上がっても付加年金は増えない
老齢基礎年金の本体には、物価や賃金の変動などに応じて年金額を改定する仕組みがあります。
一方、付加年金の部分は「200円×納付月数」で固定されています。
物価が上がっても上乗せ額は増えず、物価が下がっても減りません。長い年月の間に物価が上がれば、付加年金の実質的な価値は目減りします。
3-2. 繰上げ受給では減額される
老齢基礎年金を65歳より前から受け取る「繰上げ受給」を選ぶと、年金額が減額されます。
付加年金は老齢基礎年金と連動して支給されるため、繰上げ受給をすると付加年金も同じ率で減額されます。
反対に、受取りを遅らせる「繰下げ受給」をした場合は、付加年金も同じ率で増額されます。
繰上げによる減額率や繰下げによる増額率は生涯続きます。
3-3. 受け取る前に亡くなっても全額返金されない
付加年金を受け取る前に亡くなっても、納めた付加保険料がそのまま遺族へ返金される制度はありません。
一定の条件を満たして死亡一時金が支給される場合、付加保険料を36か月以上納めていれば、死亡一時金に8,500円が加算されます。
ただし、死亡一時金には、国民年金保険料の納付期間、本人が年金を受け取っていないこと、遺族との生計関係など、別の受給条件があります。
そのため、「納めた保険料が死亡時に全額戻る」とは考えないでください。
4. ほかの制度との関係
4-1. 国民年金基金とは同時に使えない
付加年金と国民年金基金は、同時には利用できません。
国民年金基金に加入している人は、付加保険料を納められません。すでに付加保険料を納めている人が国民年金基金へ入る場合も、付加保険料の扱いを確認する必要があります。
どちらが一律に優れているという話ではありません。
付加年金は月400円の小さな上乗せであり、国民年金基金は口数や給付の型を選んで、より大きな年金を準備する制度です。
4-2. iDeCoとは併用できる
付加年金とiDeCoは併用できます。
ただし、第1号被保険者のiDeCo掛金は、国民年金基金の掛金または付加保険料を差し引いた範囲内で設定します。
付加保険料を納めると、その分だけiDeCoに使える拠出枠が小さくなります。iDeCoの掛金は1,000円単位で設定するため、単純に上限額から400円を引いた金額をそのまま掛金にできるわけではありません。
具体的な上限と制度改正については、上記リンクiDeCoの記事の3章を確認してください。
4-3. 控除の区分は共済・iDeCoと違う
付加保険料も、その年に実際に納めた全額が所得控除の対象になります。
ただし、控除の区分が異なります。
- 付加保険料:社会保険料控除
- iDeCo・小規模企業共済:小規模企業共済等掛金控除
どちらも所得から差し引く控除ですが、確定申告で入力する欄は別です。
付加保険料は国民年金の定額保険料と同じ社会保険料控除に含めます。

5. 付加年金の手続きと納付
5-1. 市区町村・年金事務所・電子申請で手続きできる
付加保険料を納めるには、「国民年金被保険者関係届書」を提出します。
提出先は次のとおりです。
- 住んでいる市区町村の国民年金担当窓口
- 年金事務所
- マイナポータルを利用した電子申請
以前は窓口手続きの印象が強い制度でしたが、現在は電子申請にも対応しています。添付書類は原則として不要です。
付加保険料の納付をやめる場合も、辞退の申出が必要です。
5-2. 申出月より前にはさかのぼれない
付加保険料は、申出が受け付けられた月の分から納付できます。
たとえば8月に申し出た場合、8月分から納付できます。7月以前の分を後から追加することはできません。
郵送で申出書を提出した場合は、提出先が受け付けた月から始まります。
始めることを決めている人にとっては、申出を先延ばしにした月は納付月数に入りません。
ただし、生活費や国民年金本体の支払いが厳しい人まで、急いで始める必要はありません。制度を使えることと、今すぐ始めるべきことは別です。
5-3. 申出後の納付期限は翌月末
付加保険料の納付期限は、対象月の翌月末日です。
期限を過ぎても、納付期限から2年間は納められます。
ここで混同してはいけないのは、次の違いです。
- 申出前の月:後からさかのぼって加入できない
- 申出後に納付対象となった月:納付期限から2年以内なら納められる
「過去2年分を自由に追加できる」という制度ではありません。
なお、付加保険料を前納する場合は、前納期間に応じて割引があります。
5-4. 確定申告では社会保険料控除に入れる
その年に納めた付加保険料は、国民年金の定額保険料とあわせて社会保険料控除の対象になります。
確定申告では、日本年金機構から発行される「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」の証明額を確認します。
付加保険料だけを、iDeCoや小規模企業共済の控除欄へ分けて記入するものではありません。
申告書のどこに入力するかは、申告全体の記事で説明しています。

よくある質問
Q. 夜職でも付加年金を利用できますか? A. 夜職という業種ではなく、国民年金の区分で決まります。厚生年金に加入しておらず、第3号でもない第1号被保険者なら利用できます。→1-1
Q. いくら増えますか? A. 200円×付加保険料を納めた月数が、毎年の付加年金額として老齢基礎年金に上乗せされます。→2-1
Q. 本当に2年で元が取れますか? A. 通常どおり受給する場合、2年間で納付額と同額になり、2年を超えて受け取ると額面上は納付額を上回ります。繰上げ受給で減額された場合は、この計算はそのまま当てはまりません。→2-2・3-2
Q. 免除を受けていても納められますか? A. 免除・納付猶予・学生納付特例の期間は原則として納められません。ただし、産前産後免除には例外があります。→1-3
Q. iDeCoと両方利用できますか? A. 併用できます。ただし、第1号被保険者のiDeCo掛金は、付加保険料を差し引いた範囲内で設定します。→4-2
Q. 国民年金基金と両方利用できますか? A. 利用できません。国民年金基金に加入している人は、付加保険料を納められません。→4-1
Q. 確定申告ではどの控除に入れますか? A. 社会保険料控除です。iDeCoや小規模企業共済の掛金とは入力欄が異なります。→4-3・5-4
Q. 過去の分をまとめて納められますか? A. 申出月より前にはさかのぼれません。申出後に納付対象となった保険料は、納付期限から2年以内なら納められます。→5-2・5-3
Q. 窓口に行かないと手続きできませんか? A. 市区町村や年金事務所の窓口に加え、マイナポータルから電子申請もできます。→5-1
まとめ
- 付加年金は、国民年金保険料に月400円を上乗せして老齢基礎年金を増やす制度です。→1章
- 厚生年金のない第1号被保険者が受け取るのは原則として老齢基礎年金だけで、上乗せは自分で作ることになります。→1-2
- 利用できるのは第1号被保険者と65歳未満の任意加入被保険者です。免除・猶予中は原則として納められません。→1-1・1-3
- 増える年額は200円×付加保険料を納めた月数です。→2-1
- 通常受給では2年間で納付額と同額になり、2年を超えて受け取ると額面上は納付額を上回ります。→2-2
- 付加年金には物価スライドがなく、繰上げ・繰下げ受給によって減額・増額されます。→3章
- 国民年金基金とは同時に使えず、iDeCoとは拠出限度額を共有します。→4章
- 付加保険料は社会保険料控除の対象で、iDeCo・共済とは申告欄が異なります。→4-3・5-4
- 手続きは市区町村・年金事務所・電子申請で行い、申出が受け付けられた月から納付できます。→5章

