【この記事の結論】
- 退職後の健康保険と年金は別に確認します。健康保険を決めただけで、年金まで自動で切り替わるとは限りません(1章)
- 退職後の健康保険は、国民健康保険・任意継続・家族の被扶養者の3つが主な選択肢です(2-1)
- 国保と国民年金第1号への切替は14日以内、任意継続の申請は退職日の翌日から20日以内です(2-2・3-2)
- 国保の届出が遅れても、資格を取得した月まで遡って保険料がかかります(4-1)
- 年金を払うのが難しいときは、未納のまま放置せず、免除・納付猶予を申請します(3-3)
- 親の健康保険の扶養に入っても、国民年金の第3号にはなりません。第3号になれるのは、厚生年金に入っている配偶者に扶養される人です(5-1)
この記事は、社会保険に入っていた店や勤務先を辞めた後の、健康保険と年金の切替手順の記事です。
保険料がいくらになるか、軽減や減免をどこまで受けられるかは扱いません。金額は加入先、前年所得、世帯の状況などで変わるためです。失業給付の申請手順もこの記事では扱いません。
ここでは、どこへ何を出すか、期限はいつか、遅れると何が起きるかに絞って整理します。
1. 最初に「切替が必要な人か」を確認します
退職した全員が、国保と国民年金へ切り替えるわけではありません。
まず、辞める前に何へ入っていたかを確認します。
| 辞める前 | 辞めた後に確認すること |
|---|---|
| 勤務先の健康保険+厚生年金 | 健康保険の行き先と、年金の第1号・第3号への切替 |
| すでに国民健康保険+国民年金第1号 | 店を辞めただけなら原則として切替なし |
| 配偶者の健康保険の被扶養者+国民年金第3号 | 扶養の条件から外れるか確認 |
| 親の健康保険の被扶養者+国民年金第1号 | 健康保険の扶養条件を確認。年金はもともと第1号 |
特に混同しやすいのが、健康保険の「扶養」と国民年金の第3号です。
健康保険では親の被扶養者になれる場合がありますが、国民年金の第3号になれるのは、厚生年金に加入している配偶者に扶養される20歳以上60歳未満の人です。
親の健康保険の扶養に入っている20歳以上60歳未満の人は、厚生年金に入っていなければ原則として国民年金第1号です。
2. 健康保険は3つから選びます
2-1. 国保・任意継続・家族の扶養
勤務先の健康保険を抜けた後の主な選択肢は3つです。
| 選択肢 | 手続き先 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 国民健康保険 | 住んでいる市区町村 | 保険料は前年所得や世帯の状況などから計算 |
| 任意継続 | 退職前に加入していた健康保険 | 条件を満たせば退職後も継続できる |
| 家族の被扶養者 | 家族の勤務先 | 加入先の扶養条件を満たす必要がある |
どれが安いかは一律には決まりません。
国民健康保険は前年所得などから計算されます。任意継続では勤務中のような事業主との保険料折半がなくなり、本人が保険料を負担します。
一方、家族の被扶養者になれるかは、家族が加入している健康保険の認定基準によります。
国民健康保険の軽減・減免は、夜職の国民健康保険|申請が要らない軽減と要る減免で扱っています。
2-2. 国保は14日、任意継続は20日です
期限は同じではありません。
| 手続き | 期限 |
|---|---|
| 国民健康保険への加入 | 国保の資格を取得した日から14日以内 |
| 任意継続の申請 | 健康保険の資格喪失日から20日以内 |
| 国民年金第1号への切替 | 退職日の翌日から14日以内 |
国民健康保険は、加入の届出が遅れても手続き自体はできます。
一方、任意継続は、資格喪失日の前日までに健康保険の被保険者期間が継続して2か月以上あり、資格喪失日から20日以内に申請することが加入条件です。協会けんぽの場合、郵送は20日以内の必着です。
国保と任意継続を比較するなら、退職後すぐに確認します。
「国保の金額を調べてから考えよう」と放置しているうちに、任意継続の20日を過ぎることがあります。
2-3. 退職時にもらう書類を確認します
国保や年金の手続きでは、前の社会保険をいつ抜けたのか確認できる書類を求められることがあります。
退職時には、次を確認します。
- 健康保険資格喪失証明書
- 退職証明書
- 雇用保険被保険者離職票
- マイナンバーや基礎年金番号を確認できるもの
必要書類は市区町村や手続きによって異なります。
特に健康保険資格喪失証明書が必要かどうかは、国保の窓口へ先に確認しておくと動きやすくなります。
3. 年金は「第1号になるか、第3号になるか」を確認します
3-1. 退職後に第1号になる人
勤務先の厚生年金を抜けた20歳以上60歳未満の人で、
- すぐ別の勤務先の厚生年金に入らない
- 厚生年金に入っている配偶者の扶養にも入らない
場合は、国民年金第1号被保険者へ切り替えます。
手続き先は住所地の市区町村です。届出の期限は、退職日の翌日から14日以内です。マイナポータルから電子申請することもできます。
3-2. 配偶者の扶養に入るなら第3号です
退職後、厚生年金に加入している配偶者の健康保険の被扶養者になり、年金側の要件も満たす場合は、国民年金第3号被保険者になります。
この場合は、自分で市区町村へ第1号の届出をするのではなく、配偶者の勤務先を通して、健康保険の扶養と第3号の手続きを行います。
第3号になれば、国民年金保険料を自分で納める必要はありません。
ここでも、親の扶養とは分けて考えてください。
親の健康保険の被扶養者になっても、第3号にはなりません。
3-3. 払えない時は免除・納付猶予を申請します
第1号になった後、国民年金保険料を払うのが難しい場合は、未納のまま放置せず、免除・納付猶予を確認します。
承認された期間は、未納とは扱いが違います。
- 免除期間は受給資格期間に入る
- 納付猶予期間も受給資格期間に入る
- 未納は受給資格期間に入らない
- 障害基礎年金や遺族基礎年金の納付要件にも影響する
免除・納付猶予は、申請時点から2年1か月前までの期間について遡って申請できる場合があります。
ただし、後から申請できるから待ってよいという制度ではありません。
病気や事故が起きてから過去へ遡って申請しても、障害基礎年金の保険料納付要件に算入されないことがあります。払えないと分かった時点で先に申請します。

3-4. 退職による特例は「離職票だけ」とは限りません
失業などを理由にした免除・納付猶予の特例もあります。
雇用保険に入っていた人は、離職票、雇用保険受給資格者証、雇用保険受給資格通知などで失業を確認します。
ただし、特例は雇用保険加入者だけに限定されているわけではありません。
事業を廃止したことを確認できる書類でも、特例の対象になる場合があります。税務署へ提出した廃業の届出の写しなどがこれに当たります。
そのため、
「雇用保険に入っていない=必ず特例を使えない」
とは書けません。
一方で、業務委託の報酬として働いていた人が一つの店を辞めただけでは、「事業を廃止した」とは限りません。報酬型の人は、給与型の退職と同じ離職票を前提にせず、年金事務所へ確認してください。

4. 届出が遅れると請求だけは後から来ます
4-1. 国保は加入した月まで遡ります
国民健康保険の届出が14日を過ぎても、加入手続きはできます。
ただし、加入日は届出をした日になるわけではありません。
前の健康保険を喪失して国保の資格を取得した日まで遡り、資格を取得した月からの保険料が後からまとめて計算されます。
届出を半年遅らせても、その半年分の保険料がなくなるわけではありません。
辞めた後に来る請求の全体像は、夜職の辞め際の金|辞める前に精算するものと辞めた後に来る請求で扱っています。
4-2. 遅れている間の医療費は、必ず戻るわけではありません
ここは重要です。
国保への加入届を出す前に病院へ行き、有効な資格を示せなければ、医療機関ではいったん全額を支払うことがあります。
しかし、後から国保へ加入すれば必ず保険負担分が払い戻される、とは限りません。
加入の届出を14日以内にしなかったことについて、やむを得ない理由がない場合、届出前の医療費を全額自己負担とする自治体があります。
資格喪失証明書が届かないなど、14日以内に手続きできない事情がある場合は、期限を過ぎてから説明するのではなく、先に国保窓口へ連絡してください。
4-3. 年金も放置すれば消えるわけではありません
国民年金第1号への切替が必要なのに届出をしていない場合、日本年金機構から「国民年金加入のご案内」が届くことがあります。
未届のままでも、日本年金機構側で加入処理を行い、保険料の納付を求める場合があります。
つまり、
「切替をしていないから年金保険料は発生していない」
とは考えないでください。
払えない場合に必要なのは、加入手続きを止めることではなく、加入手続きと免除・納付猶予の申請を進めることです。
5. 夜職で間違えやすい2つの「失業」
5-1. 国保の失業軽減は雇用保険の離職区分が必要です
国民健康保険には、倒産・解雇・雇い止めなどによる一定の離職者について、保険料を軽減する制度があります。
対象になるのは、雇用保険上の特定受給資格者や特定理由離職者など、制度上の条件を満たす人です。
そして、この制度で軽減して計算するのは前年の給与所得です。給与所得を一定割合に置き換えて国保料を計算します。
そのため、夜職の業務委託報酬を受け取っていた人が店を辞めても、その報酬自体をこの制度で同じように軽減する仕組みではありません。
対象外でも、自治体独自の減免などを使える場合はあります。
5-2. 国保の失業軽減と年金の失業特例は別制度です
ここは混ぜないでください。
国保
- 雇用保険上の離職区分が条件
- 給与所得を軽減して計算する制度
国民年金
- 失業等による免除・猶予の特例
- 雇用保険の離職だけでなく、事業の廃止・休止なども確認対象になり得る
同じ「仕事を辞めた」という出来事でも、使える制度の条件は違います。
6. よくある質問
健康保険と年金は役所で一度に終わりますか
国保と国民年金第1号なら、同じ市区町村で手続きできる場合があります。
ただし制度上は別の手続きです。配偶者の扶養に入って第3号になる場合は、配偶者の勤務先を通します(1章・3章)。
国保と任意継続はどちらが安いですか
一律には決まりません。
国保の見込額と任意継続の保険料を確認して比較してください。ただし任意継続には20日の申請期限があります(2章)。
任意継続は誰でも選べますか
選べません。
協会けんぽでは、退職前までに健康保険の被保険者期間が継続して2か月以上あり、資格喪失日から20日以内に申請することが条件です(2-2)。
親の健康保険の扶養に入れば年金も払わなくてよくなりますか
なりません。
国民年金第3号になれるのは、厚生年金に加入している配偶者に扶養される人です。親の健康保険の扶養に入っても、20歳以上60歳未満で厚生年金に入っていなければ原則として第1号です(1章・3-2)。
配偶者の扶養に入ります
健康保険の被扶養者となり、第3号の要件も満たす場合は、配偶者の勤務先を通して手続きします(3-2)。
年金の納付書が届きません
第1号への切替が済んでいるか確認してください。
届出が確認できない場合、日本年金機構から加入案内が届いたり、加入処理が行われたりすることがあります(4-3)。
年金を払えません
未納のまま放置せず、免除・納付猶予を申請します。
過去分を遡って申請できる期間もありますが、障害年金などへ影響するため、早めに申請してください(3-3)。
離職票がありません
通常の免除・猶予は、離職票の有無だけで決まる制度ではありません。
失業等の特例を使う場合は、雇用保険の離職票以外に、事業を廃止したことを確認できる書類が使える場合があります(3-4)。
届出が遅れれば国保料を払わなくて済みますか
済みません。
資格を取得した月まで遡って保険料が計算されます(4-1)。
手続き前に病院へ行きました
まず医療費を全額支払う場合があります。
また、国保の届出が遅れたことにやむを得ない理由がなければ、届出前の医療費が後から払い戻されない場合があります。市区町村へ確認してください(4-2)。
7. まとめ
- まず、退職前に健康保険と厚生年金へ入っていたか確認する(1章)
- 健康保険は国保・任意継続・家族の被扶養者から選ぶ(2-1)
- 国保は14日以内、任意継続は20日以内に動く(2-2)
- 厚生年金を抜けて配偶者の扶養に入らない人は、国民年金第1号へ切り替える(3-1)
- 配偶者の扶養なら第3号になり得るが、親の扶養では第3号にならない(3-2)
- 年金を払えないときは、未納にせず免除・納付猶予を申請する(3-3)
- 失業等の特例は、廃業を確認できる書類でも対象になる場合がある(3-4)
- 国保の届出を遅らせても、資格取得月まで保険料は遡る(4-1)
- 届出前の医療費は、後から必ず払い戻されるとは限らない(4-2)
- 国保の失業軽減と、年金の失業特例は別制度として考える(5章)
noteでは無料記事「夜職の確定申告の全体像」を公開しています。
自分の状況に合う記事を探すなら、夜職のお金|状況から記事を選ぶから選べます。
本記事は情報提供を目的としたもので、個別の判断を保証するものではありません。最終的な確認は、市区町村、加入していた健康保険、年金事務所へお願いします。
この記事の情報について
制度は改正されることがあります。手続きをする時点の内容は、次の一次情報で確認してください。
- 厚生労働省「国民健康保険の加入・脱退について」
- 全国健康保険協会「任意継続被保険者制度」
- 日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
- 日本年金機構「国民年金保険料の申請免除・納付猶予の申請ができる期間」
- 日本年金機構「失業等による国民年金保険料の特例免除」
- 厚生労働省「非自発的失業者に係る国民健康保険料(税)の軽減について」
内容に変更があった場合は、この記事を更新し、上の日付を書き換えます。
最終更新:2026年8月

