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また、私は税理士ではありません。
この記事は、国税庁が公開している資料をもとに、夜職で働く人が経費を整理するための一般的な考え方をまとめたものです。最終的な申告内容は本人が判断し、判断が難しい場合は税務署の相談窓口または税理士に確認してください。
この記事の結論
- 最初に確認するのは、収入が給与なのか報酬なのか
- 給与の場合、原則として衣装代などを一件ずつ必要経費にはできない
- 報酬の場合は、仕事との関係を説明できる支出が必要経費になりうる
- 店から引かれている送り代やヘアメ代なども、自分が負担した経費になりうる(明細を捨てないこと)
- 私生活と仕事の両方で使うものは、仕事分を明確に分けられる場合だけ計上する
- レシートがあるだけでは不十分で、「誰に・何のために使ったか」も残す
- グレーな支出を無理に入れるより、説明できる支出を漏らさない方が安全
- 迷った支出は捨てずに保存し、申告時に計上するか判断する
0. 最初に確認すること―あなたの収入は「給与」か「報酬」か
夜職の経費を考える前に、最初に確認しなければならないことがあります。
それは、店から受け取っているお金が、
- 給与として支払われているのか
- 業務委託などの報酬として支払われているのか
という違いです。
同じように店へ出勤して接客していても、契約や働き方によって税務上の扱いが異なることがあります。
給与として受け取っている場合
給与所得では、事業所得や雑所得のように、衣装代やタクシー代を一件ずつ必要経費として差し引くのが原則ではありません。
代わりに、収入に応じて計算される「給与所得控除」が適用されます。
給与所得者にも「特定支出控除」という制度はありますが、対象となる支出や金額に条件があり、勤務先による証明なども必要です。単に仕事で使ったというだけで、自由に経費へ入れられる制度ではありません。
報酬として受け取っている場合
業務委託などの報酬として受け取り、事業所得または雑所得として申告する場合は、その収入を得るために必要だった支出を必要経費として差し引ける可能性があります。
ホステスなどへの支払いについても、国税庁は「報酬・料金」として扱う場合と、実態により給与として扱う場合があることを示しています。
店から受け取った書類が、
- 給与所得の源泉徴収票
- 報酬の支払調書
- 給与明細
- 報酬明細
のどれなのかを確認してください。
あわせて、明細に”源泉所得税が引かれていないか”も見てください。報酬から源泉徴収されている場合、確定申告をすることで払いすぎた分が戻ってくる可能性があります。詳しくは[夜職の確定申告、全体像]で扱います。
ただし、書類の名称だけで最終的に決まるとは限りません。分からない場合は、まず店へ支払い区分を確認し、それでも不明なら税務署または税理士に相談するのが安全です。
この記事では、主に報酬として収入を受け取っている人の必要経費について説明します。
1. 経費を判断するための三つの質問
経費を判断するとき、最初の確認として役立つのが、次の質問です。
「この仕事をしていなければ、その支出は発生していたか?」
仕事をしていなければ発生しなかった支出は、必要経費として説明しやすくなります。
ただし、この質問だけで自動的に経費になるわけではありません。さらに、次の三点を確認します。
1. 収入を得る仕事と関係しているか
その支出が、接客、営業、移動、衣装の準備、記帳など、収入を得るための業務と関係している必要があります。
2. 私生活の支出と分けられるか
仕事と私生活の両方で使っているものは、全額を経費にできるとは限りません。
仕事で使った部分を、利用時間、日数、面積などの合理的な基準で区分できる場合は、その部分だけを計上します。これが一般に「家事按分」と呼ばれる考え方です。
3. 後から説明できるか
税務上重要なのは、経費の名称を付けることではなく、
- いつ
- いくら
- 誰に支払い
- 何の仕事のために使ったか
を説明できることです。
国税庁も、家事関連費について、業務上必要な部分が明確に区分できる場合は、その部分を必要経費にできるとしています。
2. カテゴリ別に見る、夜職の経費の現実線
ここからは、夜職で発生しやすい支出を、
- 比較的説明しやすいもの
- 条件によって判断が分かれるもの
- 経費としては慎重に考えるべきもの
に分けて見ていきます。
なお、以下はすべて、報酬として収入を受け取っている場合の一般論です。
衣装・身だしなみ
比較的説明しやすいもの
- 店でのみ着用するドレスや衣装
- 仕事専用として購入した靴やバッグ
- コスプレなど、通常の私生活では使わない衣装
- 衣装のクリーニング代や補修代
- 出勤日に仕事のためだけに利用したヘアセット代
特に、店に置いてある、勤務時以外には着用しない、店から衣装の指定を受けている、といった事情があると、仕事との関係を説明しやすくなります。
判断が分かれやすいもの
- 私服としても着られるワンピースや靴
- 美容院でのカット、カラー、トリートメント
- ネイル
- 化粧品やスキンケア用品
- 普段使いもできるバッグやアクセサリー
仕事のために購入したつもりでも、私生活でも通常使用するものは、家事費と判断されやすくなります。
「夜職だから美容代は全部経費になる」という基準はありません。
勤務日だけに必要な施術なのか、店から具体的な指定があるのか、私生活での使用と明確に分けられるのかを考える必要があります。
慎重に考えるべきもの
- 脱毛
- エステ
- 美容整形
- ダイエット費用
- サプリメント
- 日常的なマッサージや整体
これらは仕事に役立つ面があったとしても、身体そのものの維持、美容、健康という私生活上の利益も大きい支出です。
金額も大きくなりやすいため、安易に全額を必要経費へ入れるのは勧めません。
10万円以上の物を買った場合
営業用に別のスマートフォン端末を買った、高額なドレスやバッグを仕事専用として購入した、という場合は注意が必要です。
取得価額が10万円以上の物は、原則として買った年に全額を経費にするのではなく、複数年に分けて経費化する「減価償却」という扱いになります(青色申告には一定の金額まで一括で経費にできる特例もあります)。
「高い物を買った年に、全額を経費に入れて申告した」というのは、否認されやすい典型的なパターンです。10万円以上の物を仕事用に買ったときは、領収書を必ず残したうえで、計上方法を税務署または税理士に確認してください。
店から引かれているお金
夜職の明細では、報酬から店がいろいろな名目で差し引いていることがあります。
- 送り代
- ヘアメイク代
- 衣装のレンタル代
- 厚生費
- 雑費
- 遅刻、欠勤などのペナルティ
ここで重要なのは、引かれているお金の中に、自分が負担している経費が含まれている可能性があるということです。
そうなってしまうと、二重に経費がかかったこととなってしまいます。
例えば店がヘアメイク代を報酬から差し引いているなら、それは実質的に自分がヘアメイク代を払っているのと同じです。ところが”手取りしか見ていない」と、この支出は記録から完全に漏れます。財布から現金で払っていないため、レシートも残らないからです。
一方で、記帳のしかたには注意が必要です。
- 最初から報酬額が減額されている扱いなのか
- 売上や報酬を全額計上した後に経費として支払った扱いなのか
- 店が立替金や雑費として処理しているのか
によって、処理が変わる可能性があります。
また、遅刻や欠勤のペナルティとして引かれた金額は、送り代などとは性質が異なる問題です(法律上の罰金とも別の話です)。
自分で判断がつかない場合にやるべきことは一つです。明細を捨てず、差し引かれる前の金額と、実際に受け取った金額の両方が分かる状態にしておく。そのうえで、明細の実物を見せて税務署または税理士に確認してください。
移動費
比較的説明しやすいもの
- 出勤や退勤に使った電車、バス、タクシー
- 同伴先から店までの移動費
- 撮影や仕事上の打ち合わせへ行くための交通費
- 出稼ぎ先への業務上必要な移動費
終電後の退勤でタクシーを利用した場合などは、勤務日、店名、乗車区間を記録しておくと説明しやすくなります。
タクシーは領収書を受け取り、配車アプリを利用した場合は、アプリ上の利用履歴や電子領収書も保存してください。
判断が分かれやすいもの
- アフター先への移動費、アフター先からの帰宅費
同伴は店が把握し、ノルマや売上に算入される営業行為であることが多いのに対して、アフターは店の管理外で行われることが多く、私的な交際との区別が問われやすい支出です。
店の営業として行った(指名客の維持など、売上との関係を説明できる)場合に限って検討し、日付、相手、目的を記録しておいてください。
なお、給与として働いている人は、これらの移動費を通常の必要経費として自由に差し引けるわけではありません。
営業・接客にかかる費用
比較的説明しやすいもの
- 自分が負担した同伴時の飲食代
- お客様への業務上のプレゼント
- お礼状、名刺、ショップカード
- 営業用写真の撮影費
- 写真の加工やデザインを外注した費用
- 営業用SNSや予約管理サービスの利用料
飲食やプレゼントは、私的な交際との区別が問題になりやすい支出です。
レシートだけでなく、
- 相手の名前や識別できる呼び名
- 店名
- 同伴、営業、誕生日のお礼などの目的
をメモしておきます。
個人情報が気になる場合は、本名ではなく、顧客管理で使用している呼び名や管理番号でも構いません。後から自分で内容を確認できる形にしてください。
スマホ・通信費
仕事分を分けて考えるもの
- スマートフォンの利用料金
- 通話料
- インターネット回線
- 営業用アプリの料金
- 写真保存用のクラウドサービス
- 営業用の有料SNS機能
営業専用のスマートフォンを別に契約している場合は、仕事専用であることを説明しやすくなります(端末代が10万円以上の場合は、前述の減価償却にも注意してください)。
私用と仕事用を一台で兼用している場合は、全額ではなく、実際の利用状況に応じて仕事分を分けます。
「なんとなく半分」ではなく、
- 営業連絡に使う時間
- 通話履歴
- 使用する日数
- データ通信の用途
など、自分で継続して説明できる基準を決めてください。
自宅の家賃・光熱費
自宅で次のような作業をしている場合は、仕事で使用した部分を検討できることがあります。
- 営業メッセージの送信
- SNS投稿の作成
- 売上や経費の記帳
- 衣装や仕事道具の保管
- オンライン接客
- 写真や動画の編集
ただし、夜職は店舗で接客する時間が中心になる業態も多いため、自宅の家賃を大きな割合で経費にする場合は、特に説明が必要です。
家賃なら使用している部屋や面積、光熱費なら業務時間など、実際の利用状況に合った基準で区分します。
衣装をクローゼットの一部に置いているだけで、自宅家賃の半分を経費にするといった計算は、現実的とは言いにくいでしょう。
申告・情報収集にかかる費用
比較的説明しやすいもの
- 会計ソフトの利用料
- 業務に関する税理士報酬
- 仕事に直接関係する書籍
- 業界情報を得るための有料記事やサービス
- 記帳や申告のための文房具、プリンター用品
税理士へ支払う費用でも、相続や私的な相談など仕事と関係のない部分が含まれる場合は、その内容を分けて考えます。
健康診断・検査費用
本人の健康診断、性病検査、予防や治療に関する費用は、仕事との関係があるように見えても、個人的な健康管理との境界が強い支出です。
そのため、
「夜職に必要だから当然に経費になる」
とは考えない方が安全です。
店から明確に検査を義務付けられている、契約上の条件になっているなど、特殊な事情がある場合でも、書類を保存したうえで税務署または税理士に確認してください。
なお、必要経費になるかという問題と、医療費控除の対象になるかという問題は別です。
3. 必要経費として扱いにくいもの
次のような支出は、基本的に私生活上の支出として考えます。
- 普段の食費
- 日用品
- 自宅家賃や光熱費の私生活分
- 私的な旅行
- 友人や交際相手との飲食
- 普段使いの衣服や化粧品
- ホストクラブなどでの自分の遊興費
- 所得税や住民税
- 税金の延滞税、加算税
- 法律上の罰金、科料、過料、交通反則金
「接客の勉強」「営業の研究」と説明しても、実態が自分の遊興であれば、仕事上の必要経費として説明するのは困難です。
国税庁も、所得税、住民税、延滞税、加算税、罰金などは必要経費にならないと示しています。
国民健康保険料と国民年金は「経費」ではないが、税金は減る
国民健康保険料や国民年金保険料は、事業の必要経費にはなりません。
ただし、経費とは別の「社会保険料控除」という枠で、所得から差し引くことができます。「経費にならない=税金に関係ない」ではないので、支払った記録(納付書、口座引き落としの履歴など)は必ず残してください。
経費と控除の違いについては、[夜職の確定申告、全体像]で説明しています。
4. 経費の記録は知識より仕組みで決まる
必要経費を漏らさないために、難しい仕訳を最初から覚える必要はありません。
まずは、次の三つを続けてください。
1. 紙のレシートや領収書を捨てない
財布やバッグに、仕事関係のレシートを入れる場所を一つ作ります。
その場で完璧に分類する必要はありません。まず捨てないことが優先です。
2. 電子領収書やアプリの履歴は電子データのまま保存する
配車アプリ、通販、予約サービス、メールで受け取ったPDFなど、電子的に受け取った領収書や利用明細は、電子データのまま保存するのが原則です(電子帳簿保存法により、電子取引のデータは電子保存が求められています)。
アプリから後で見られると思って放置すると、閲覧期限が切れて取り出せなくなることがあります。定期的にPDFやデータをダウンロードして保存してください。
3. 支出の目的をその場でメモする
レシートだけを見ても、数か月後には何の支出だったか分からなくなることがあります。
最低限、次の四点を残します。
- 日付
- 金額
- 相手や店名
- 仕事上の目的
レシートに直接書いても、スマートフォンのメモや会計ソフトへ入力しても構いません。
月に一度記録を整理する
月に一度、15分から30分程度、レシートと利用履歴を整理する日を作ります。
一年分を申告直前にまとめようとすると、
- 仕事か私用か分からない
- 相手を思い出せない
- 電子領収書の閲覧期限が切れている
- 明細と領収書が結びつかない
といった問題が起こります。
白色申告であっても、収入や必要経費を記載した帳簿と、業務に関する領収書などの保存が必要です。申告が終わったからといって、すぐに処分しないでください。
5. 記録にはスプレッドシートと会計ソフトのどちらを使うか
スプレッドシート
最初は、次の項目だけでも機能します。
- 日付
- 支払先
- 金額
- 内容
- カテゴリ
- 仕事で使った割合
- メモ
費用がかからず、自分で内容を確認しながら記録できる点がメリットです。
一方で、集計や申告書への転記を自分で行う必要があります。
会計ソフト
会計ソフトには、次のような機能があります。
- 銀行口座やクレジットカードとの連携
- レシートの読み取り
- 取引の自動提案
- 青色申告決算書などの作成
- e-Taxへの申告補助
ただし、自動読み取りされた内容が必ず正しいとは限りません。仕事か私用か、どの勘定科目にするか、按分をどうするかは、自分で確認する必要があります。
青色申告の65万円控除を受けたい場合
65万円の青色申告特別控除を受けるには、会計ソフトを契約するだけでは足りません。
一般に、
- 青色申告の承認を受けていること
- 複式簿記で記帳すること
- 貸借対照表と損益計算書を添付すること
- 期限内に申告すること
- e-Taxで申告するか、一定の電子帳簿保存を行うこと
などの要件があります。
会計ソフトは法的な必須条件ではありませんが、複式簿記や申告書作成に慣れていない人にとっては、現実的な補助になります。
どのサービスを選ぶか以上に重要なのは、今日から支出を記録し始めることです。
6. よくある質問
Q. 過去のレシートを捨ててしまいました
クレジットカード明細、銀行口座、配車アプリ、通販サイト、メールなどから、支払いの手掛かりを探せる場合があります。
ただし、カード会社の利用明細だけでは、購入内容や取引の詳細を十分に証明できない場合があります。
利用店舗から領収書や購入履歴を再取得できないか確認し、
- 何を購入したか
- 何の仕事に使ったか
- 金額
- 支払日
を可能な範囲で補います。
過去分を無理に作り直すより、今日以降の記録を確実に始めることを優先してください。
Q. 現金で払い領収書をもらえませんでした
日付、金額、相手、目的をその場で記録します。
自分で作ったメモがあるだけで必ず経費として認められるわけではありませんが、何も記録がない状態よりは、支出の事実を説明しやすくなります。
可能であれば、相手とのメッセージ、予約履歴、出金記録なども一緒に保存します。
Q. 経費は売上の何割までなら大丈夫ですか
「売上の何割までなら安全」という公式な割合はありません。
割合を先に決めて経費を作るのではなく、実際に仕事のために支払った金額を記録した結果として、経費率が決まります。
重要なのは割合そのものではなく、個々の支出について仕事との関係を説明できることです。
Q. 経費を多く入れると税務署に疑われますか
説明できる必要経費であれば、金額が大きいという理由だけで外す必要はありません。
反対に、金額が小さくても、私的な支出を仕事用として計上するのは適切ではありません。
「ばれない金額」を考えるのではなく、資料を見せながら説明できるかを基準にしてください。
まとめ――攻めるより、漏らさず残す
夜職には、衣装、移動、営業、通信など、仕事のために発生する支出が数多くあります。
一方で、美容、健康、衣服、自宅費用など、私生活との境界が曖昧になりやすい支出も少なくありません。
大切なのは、グレーな支出を無理に経費へ入れることではありません。
- 給与か報酬かを確認する
- 仕事との関係が明確な支出を残す
- 店から引かれている項目も含めて、明細を保存する
- 私生活と共用するものは仕事分を分ける
- 日付、金額、相手、目的を記録する
- 分からないものは資料を残して確認する
この順番で進めれば、経費を必要以上に恐れることも、反対に無理な申告をすることも減らせます。
まず今日から、仕事で使ったレシートと店の明細を捨てないところから始めてください。
免責事項
本記事は、公開時点の制度および国税庁の公開資料をもとに作成した一般的な解説です。所得区分や必要経費の判断は、契約内容、働き方、支出の目的、使用状況などによって異なります。
本記事だけを根拠に申告内容を決定せず、判断が難しい場合は、税務署の相談窓口または税理士に確認してください。
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