この記事の結論
- 白色か青色かは、次の3問で決まります。①収入は給与か報酬か → ②(報酬なら)帳簿をつけるか → ③(つけるなら)どのレベルまでやるか
- 給与だけの人に、この選択は存在しません。 白色・青色は事業などの所得の申告方法の話で、給与所得には関係がありません
- 青色申告は、申告のときには選べません。事前申請制です。 承認申請書の提出期限は、原則その年の3月15日(新しく開業した場合は開業から2か月以内)。期限を過ぎた年は白色で申告し、翌年分の申請を先に出します
- 「白色なら帳簿はいらない」は過去の話です。 2014年以降、白色申告者にも記帳と帳簿保存の義務があります。同じ手間の水準で青色10万円控除(単式帳簿でよい)が使えるため、「手間を理由に白色を選ぶ」根拠はほぼ消えています
- 控除の額(10万円・55万円・65万円)は制度で決まった数字ですが、税金がその額だけ減るわけではありません。減るのは「控除額×自分の税率」の分で、効果は所得によって人ごとに違います
1.第1問:収入は給与か報酬か
白色・青色の前に、この確認が先です。
青色申告は、事業所得など特定の所得を申告する人のための制度であり、給与所得には使えません。店から給与として支払われ、源泉徴収票が出る働き方だけの人には、白色か青色かという選択自体が存在しません。年末調整と確定申告の関係は2か所から収入がある人の確定申告で扱っていますので、そちらへどうぞ。
- 報酬(業務委託)で受け取っている → この記事の対象です。第2問へ
- 給与+報酬の2か所 → 報酬部分についてこの記事の対象です。全体の申告構造は上記の”掛け持ち”記事のパターンAで
- 給与のみ → この記事は閉じてかまいません
自分がどちらか分からない場合の見分け方は、掛け持ち記事の1章に書きました。名称ではなく、源泉徴収の欄と支払いの実態が手がかりになります。
2.白色と青色の違いは「申請・帳簿・控除」の3点だけです
比較表で20項目並べる記事もありますが、判断に効く違いは3つに集約されます。
2-1.申請:青色は事前申請制です
白色は何の手続きもいりません。申請しなければ自動的に白色です。
青色は、税務署に「青色申告承認申請書」を出して初めて使えます。 提出期限は原則、青色にしたい年の3月15日。新しく事業を始めた場合は、開業から2か月以内です(正確な期限と様式は国税庁サイトで確認してください)。
ここが最大の誤解ポイントです。青色は、翌年2〜3月の申告のときに「よし、青色で出そう」と選べるものではありません。 稼いでいる年のうちに申請しておく必要があります。
期限を過ぎていた人の動きは一つです。今年分は白色で申告し、来年分の承認申請書を今出す。 承認申請は一度出せば、取りやめや取消がない限り、毎年出し直す必要はありません。
なお、青色承認の却下事由は法律で決まっており、業種を理由に却下される仕組みはありません。「水商売だと青色にできない」という制度は存在しません(帳簿の不備や過去の取消歴など、法定の事由に当たる場合は別です)。
2-2.帳簿:白色にも記帳義務があります
2014年1月から、白色申告者にも記帳と帳簿保存の義務があります。「白色なら帳簿はいらない」は、10年以上前に終わった話です。
つまり現在の選択肢は「帳簿をつけるか、つけないか」ではありません。**「どの形式でつけるか」**です。
- 白色:簡易な方法による記帳(収入と経費を日々記録)
- 青色・10万円控除:単式(簡易)帳簿でよい。白色の記帳と手間の水準はほぼ変わりません
- 青色・55万円/65万円控除:複式簿記。仕訳・総勘定元帳・貸借対照表まで作ります
手間の壁は白色と青色の間ではなく、単式と複式の間にあります。ここを取り違えると「青色=難しい」という誤解になります。
帳簿と領収書等には保存年限があります(帳簿は7年など、書類の種類で異なります。国税庁で確認してください)。記録の残し方の実務は経費編の記録の章に書いたとおりで、電子データは電子のまま保存が原則です。
2-3.控除とその他の特典
青色申告特別控除の額は制度で決まっています。単式で10万円、複式で55万円、複式+e-Tax申告(または電子帳簿保存)で65万円です(要件の詳細は国税庁で確認してください)。
ここで一つ、お断りしておきます。65万円控除を使っても、税金が65万円減るわけではありません。 控除は「税金の計算のもとになる所得」から引かれる数字で、実際に減る税額は「控除額×自分の税率(所得税+住民税)」の分です。効果は所得の大きさで人ごとに変わるため、「青色で◯万円得」と一律に書いてある記事は、その時点で読者の所得を無視した話をしています。
控除以外の青色の特典で、夜職の実務に関係が出やすいのは2つです。
- 赤字の繰越(3年):経費がかさんで赤字になった年の損失を、翌年以降の黒字と相殺できます。開業初年度や、衣装・移動などの支出が先行する働き方では現実に起きます
- 少額減価償却資産の特例:上記経費編で「10万円以上は減価償却」と書いた壁が、青色では一定の要件のもと30万円未満まで一括経費にできます(年間の上限あり・適用期限のある特例のため、国税庁で確認してください)。高い美容機器や仕事用の機材を買う人には、これだけで青色を選ぶ理由になり得ます
3.第2問:帳簿をつけるか(この答えが所得の種類まで決めます)
第2問は「白色か青色か」ではなく、その手前の「帳簿をつけるか」です。理由は、この答えが控除だけでなく、所得の種類の判定にまで関わるからです。
報酬で受け取った収入は、事業所得か雑所得のどちらかとして申告することになりますが、青色申告が使えるのは事業所得(と不動産・山林所得)だけです。雑所得に青色はありません。
そして、事業所得か雑所得かの判定では、帳簿書類の保存が重視される扱いになっています(2022年の通達改正による運用です。詳細は国税庁の資料で確認してください)。おおまかに言えば、帳簿をつけて保存している場合は事業所得として扱われる方向に、帳簿がない場合は雑所得として扱われる方向に働きます。
つまり、順番はこうなります。
- 帳簿をつける → 事業所得の主張が立つ → 青色の入口に立てる
- 帳簿をつけない → 雑所得側に寄る → 青色の選択肢が消える(白色の記帳義務の問題も残ります)
「青色にするか迷う」の実体は、ほとんどの場合「帳簿をつけると決めるかどうか」です。ここで決めることは一つしかありません。つける。 つけた上でどのレベルにするかが第3問です。
なお、過去の分を申告してこなかった人は、今年のレベル選びの前に過去分の整理が先になります。手順は別の記事で扱っています。

4.第3問:どのレベルでやるか
判断基準はシンプルで、「複式簿記の手間を、控除の差(10万円→55/65万円)で買うか」です。ケース別に書きます。
4-1.手間を最小にしたい人:青色10万円控除
単式帳簿でよく、白色の記帳義務と手間はほぼ同じ水準です。同じ手間で控除だけ乗るため、報酬で働いていて申請期限に間に合うなら、白色をあえて選ぶ理由は「申請書を1枚出すのが嫌」以外にはほぼ残りません。
4-2.控除を取り切りたい人:65万円控除(複式+e-Tax)
複式簿記と聞いて、簿記の教科書を思い浮かべる必要はありません。現在、複式帳簿を手書きで作る人はほぼいません。 会計ソフトに日々の収入と経費を入れれば、仕訳・総勘定元帳・貸借対照表・青色申告決算書までソフト側が組み立てます。実務上の手間は「複式簿記を学ぶ」ではなく「入力を溜めない」に置き換わっています。
4-3.期限を過ぎていた人:今年は白色+来年分の申請
2章1節のとおりです。今年分を白色で申告する場合も記帳義務はありますから、どのみち帳簿はつけます。それなら、来年の青色に耐える形式で今からつけ始めるのが、二度手間のない動き方です。
4-4.収入が小さい・続けるか未定の人
「今年は試しに数か月だけ」のような働き方で、帳簿を保存しないなら、雑所得側の申告になります(3章)。それも一つの選択ですが、雑所得を選んだのではなく、記録を放棄した結果として雑所得になるという順番は自覚しておいてください。記録だけは残しておけば、あとからどちらの整理もできます。逆は戻れません。
5.手続きの実務:開業届と承認申請書
5-1.出すのは2枚セットです
青色にすると決めた場合、実務では開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)と青色申告承認申請書を同時に出すのが通常の形です。どちらも国税庁サイトの様式で作れて、提出は税務署の窓口・郵送・e-Taxのいずれでもかまいません。控えは必ず残してください(郵送なら控え返送用の封筒を同封、e-Taxなら受信通知を保存)。
職業欄の書き方に決まった正解はありません。実態に沿った記載であればよく、職業欄の書き方で青色承認の可否が変わる仕組みはありません(2章1節のとおり、却下事由は法定です)。
5-2.「開業届で親や店に知られませんか」
開業届は税務署に対する届出で、そこから家族や店に通知が行く仕組みはありません。知られる経路として現実に問題になるのは住民税の通知の側で、その仕組みと対処の限界は全体像のQ&Aと掛け持ち記事の4章に書いたとおりです。不安の宛先を間違えると、対策する場所も間違えます。
5-3.この記事で扱っていないこと
ここまでの話はすべて所得税(と住民税)の申告方法の話です。消費税とインボイス登録は別の制度・別の判断であり、白色か青色かとは切り離して考えてください。混ぜると両方誤ります。
よくある質問
Q.水商売だと青色申告はできないと聞きました。
制度上、業種を理由に青色承認が却下される仕組みはありません。却下事由は法律で決まっています(2章1節)。
Q.3月に思い立ちました。今年分から青色にできますか?
原則できません。承認申請の期限はその年の3月15日(新規開業は開業から2か月以内)です。今年は白色で申告し、来年分の申請を先に出してください(2章1節・4章3節)。
Q.白色なら帳簿はいらないですよね?
いいえ。2014年から白色申告者にも記帳・保存の義務があります(2章2節)。
Q.貸借対照表なんて作れません。
55万・65万円控除は複式簿記が前提ですが、手書きで作る必要はなく、会計ソフトが出力します(4章2節)。単式でよい10万円控除から始める選択もあります(4章1節)。
Q.これまで雑所得で申告してきました。青色に変えられますか?
青色は事業所得などが前提です。帳簿をつけて保存することが判定の起点になります(3章)。切り替えの個別判断は税務署・税理士へご相談ください。
Q.開業届を出すと扶養から外れますか?
開業届の提出と扶養の判定は別の話です。扶養は所得の額などで判定されます。全体像記事のQ&Aを参照し、条件は加入している健康保険と国税庁の資料で確認してください。
まとめ:3問の答えから動きます
- 給与か報酬かを確認します。給与のみなら、この記事の選択は存在しません(1章)
- 報酬なら、帳簿をつけると決めます。この決定が青色の入口で、所得の種類の判定にも関わります(3章)
- レベルを選びます:手間最小=青色10万円(単式)/控除最大=65万円(複式+e-Tax、実務はソフト)(4章)
- 青色にするなら、開業届+承認申請書を期限内に出し、控えを残します(2章1節・5章)
- 期限を過ぎていたら、今年は白色+来年分の申請を今出します。帳簿は青色に耐える形式で今から(4章3節)
- 帳簿と領収書は保存年限まで残します。電子データは電子のままです(2章2節)


